認知症の高齢者や知的障害のある方の意思能力の不足を補完する制度として成年後見制度。世間的には「正義の味方」的なイメージですが、ダークサイドも。「全国手をつなぐ育成連合会」の権利擁護センターが行った制度利用者の家族へのアンケートでは、制度の問題として一番多かったのが、「後見利用を途中でやめられない」。言い換えれば、後見人の報酬は死ぬまで払い続けなければならないということ。利用するのであれば、覚悟もお金も必要です。
原則死ぬまでやめられない、お金もかかる
アンケートは2021年2月〜4月に実施。回答者は1386人。すでに成年後見制度を利用している151人に利用してみて問題だと思うところを聞いたところ、「申し立てしたら取り下げられない/後見の利用を途中でやめられない」と答えた人が51%で最も多かった。次いで、「財産管理だけで身上保護をしてもらえない」「福祉と連携していない」がそれぞれ25%。比べると、「やめられない」がぶっちぎりです。
成年後見人がついた場合、やめられるのは、本人が死亡した場合と申し立てした時点より症状が軽減してより軽い人向けの類型である保佐、補助でも大丈夫となったとき。後者の場合も、家庭裁判所の裁判官が認めてくれればの話で、体験談を聞く限り、そう簡単にはいかないようです。

「その他」の内容 【裁判所に対する疑問・不信感など】 ・生活費の収支の報告をきちんとしないと、家庭裁判所からきつく言われた。 ・家裁事務官や裁判官は万事財産管理のみ。障害福祉のことを理解していないため議論にならず。 ・本人の預貯金が一定額を超えると、後見支援信託か後見監督人を付けるかの、選択をせまられる。 【手続き等の煩雑さ】 ・報告書が大変/・手続きが大変/・手続きの大変さと、細かい指示に疲弊した。 【親が後見人の場合は問題を感じない】 ・親きょうだいがやった方が良い /・問題があると思うので母親の私が後見人になった 【その他、権利侵害など】 ・後見支援信託制度利用の際、弁護士がつき、かなり多額な報酬を要求された。 【希望すること】 ・引継ぎでは、個人ではなく法人後見をやってもらいたい。
司法側は財産管理志向、一方、福祉側は日常性支援志向でうまくかみあっていないことが、「財産管理ばっかり」「福祉と連携できていない」という指摘になるのでしょう。自由意見にも、「家裁事務官や裁判官は万事財産管理のみ。議論にならず」など家裁や後見人となった弁護士への不満がみられます。「親やきょうだいがやったほうが良い」という意見もありますが、誰を後見人に選ぶかは、裁判官の判断。気に入らないという理由では、簡単に交代はしてくれません。
「勧められたから」は危険、利用者の体験を共有しよう
このアンケートでは、ご家族が後見人になっているケースが多く、後見人への不満は比較的少ないように見受けられますが、づなると「親のあとが心配」。一方、第三者に頼んだ場合、「費用がかかる。いずれは本人の年金、遺産では不足することになることが心配」という声も。ネットで調べても出てくるのは、利用を勧める側の意見ばかりで、体験者の声は貴重です。今の成年後見制度は利用者からみると一か八かみたいなところがあって、危なっかしい制度ですので、利用を検討している方はぜひチェックしてください。